今、私の目の前には、17インチディスプレイとその横に縦に置かれた横型NECのPC-9821Ap。そして、さらにその横に、鋸で半分に切ったカラーボックスに納められたKENWOODのコンパクトステレオセット。スピーカは、コンピュータラックの棚板の両側にBOSE。
いつもは、ピッとか、Windowsのジャジャーとかしか鳴っていないBOSEが、久々に音楽を奏でている。マンドリンのように同じ音程を小刻みに繰り返しているが、ちょっと三味線のような音にも聞こえる。メロディに聞き覚えは、全くない。
今から1ヶ月ほど前、3月の終わりだったかなあ。私の勤務する教育センターに、音楽の浦野先生がなんの用事だったか忘れたが、夕方寄られた。
『中国に行って来たゾー。おみやげに「中国琵琶」っていうのを買って来たゾー。』
「どんな楽器?見たことも聞いたこともない。そうだ、調べてみよう。インターネットだ。NTTのTITANで出るかなあ。”琵琶”と...」
検索くらいならできるようになってきた私は、ただのNET SURFINEは、飽きてきた頃で、これは絶好のチャンスでした。
「おー、出た出た。こんなにたくさん。あれ、でも”琵琶湖”ばっかりじゃん。日本のサーバーには、情報が無いなあ。」
『英語でPipaって言うらしいよ。』(さすが浦野先生、こだわりの40代)
「よし、Alta Vistaで世界のサーバーを検索だ。あった、あった。こんな形のもんかあ。」画面上には、英語の説明と結構きれいな白黒の琵琶の写真。
どうやら、カリフォルニアの楽器やCDを扱っている販売店のカタログのページのようだ。カタログとはいえ、とにかく数え切れない楽器の数。世界中の楽器が出てきた。アイルランドにも、Pipaという同じ名前の吹奏楽器もあるようだ。何万円もする物もあれば、Student Modelの5千円程のものもある。
『値段からすると俺のはStudent Modelかな?あ、車の中に積んであったかもしれない。』
浦野先生は、一度自分の車に戻り、中国琵琶を運んで来られた。指でつまびいてみたけど、どうもわからない。「どうやって演奏するんですかあ?」...「?」
インターネット画面上には、オーディオサンプルは無かった。
「CDが出てないかなあ。あ、あるある2つ見つかったよ。あとで注文してみますね。」
ということで、私の初めてのInternet Shoppingとなったわけです。自宅からカリフォルニアの"LARK IN THE MORNING"というさっき見た店につなぎ、注文のフォームに入力して、クレジットカード...と思ったけれど、ここは安全策。まだインターネットではセキュリティーの問題解決が完全とは言えないらしい。プリントアウトして、翌日ファックスから発注。これなら、クレジットカード番号を途中で盗まれることもないだろう。その後、「1週間くらいで着くかな。」「英語打ち間違えてないよなあ。」と、気にしていたものの、忘れかけていた私でした。
今日、夜9時半に帰宅。真っ暗な2階のなんでも部屋。もう家内も、いつも宵っ張りの4歳と2歳の娘も寝てしまったようだ。電気をつけると幅110cmのパソコンラックの上に、50cm四方、厚さ15cm程の段ボール箱が置かれていた。"AIR MAIL"と印字されたシールが張って有る。
「お、もしかして...あれか?」
カッターで裏から開けてみる。箱は、記念にしばらく捨てない。もしデジタルカメラがあれば、こんな時すぐ撮っておけるってやつかな。「中国のCDってどんな絵柄がジャケットに描かれてるのかなあ?」と最初に出てきたのは、ちょっと乱暴にめくると破れそうな薄いくせに100ページもある新聞紙みたいな柔い楽器カタログ。「これがWWWの上で見たやつか。」これと比べると、日本のカタログの紙質は良すぎる。アメリカのカタログなんて、みんなこんなもんだ。これで十分じゃないか。ちょっとアメリカ文化に触れたようでうれしい。
次にカタログの下には、発泡スチロールの屑、これをかき分けると、CDが出てきましたよ。「ほうほう、”長安...”カリフォルニアから中国の漢字が送られてきた。...あれえ、”長安の夢”?」確かにひらがなの”の”だ。おまけに、”中国琵琶”の漢字のあとにカタカナで”(ピパ)”と注釈まである。さらにレーベルの下の方を見ると、”発売元:日本キングレコード株式会社”。裏返すと「ピパの持つ表現力...スパークする音と音、疾走するパッセージ、コンピュータミュージックを彷彿とさせる極限のプレイは、他の追随を許さない。」だとお。中国古来の楽器とインターネットの相容れそうもない組み合わせの絶妙さに酔っていた私に、ここでも無理矢理結びつけるコンピュータか。しかも全部日本語。これじゃ、日本でだって買えるじゃん。"税込み定価\2,500"と、ここまで読むとすっかり日本文化。伝票を見ると$19.00とある。「得した、かな?これは、あとでもう1枚のと合わせて計算してみよう。もう1枚は、と見ると、"CHINE"と書いてある。あれ、CHIN'A'じゃないの?裏返すと、"MADE IN FRANCE"の文字。これも中国じゃない。こっちは、$20.00でした。
というわけで、
インターネットで日本から中国楽器を検索したら、アメリカの店で見つかって、注文して届いたCDは、日本のキング(イギリスじゃないよ)レコードとフランスのPLAYA SOUNDのものでした。でも、今目の前で演奏されているのは、”星条旗よ永遠なれ”ではなく、どうやら中国の音楽らしいです。どちらかというと現代っぽい演奏ですけどね。それがまたプログレッシブロックファンの私にとって、なかなか心地よい音です、はい。あなたに聞かせてあげたい。
浦野先生、あした持っていきますからね。まだ返してない?年前のCD、これで許して下さい。ちなみに航空便送料含め請求総額は、$65.17でした。結局そう安くは無かったようですが、こんなものでしょう。これは、いつ引き落とされるのだろう。円があまり安くならないうちにとちょっとだけ願っております。
about "Pipa" from Lark In The Morning
The pipa is a Chinese lute and goes back more than 2000 years. Because it has a resonant, clear and enchanting timbre, the pipa holds a unique position among China's many plucked instruments. Playing techniques vary widely. It is used commonly as a solo and orchestral instrument, both in China and abroad. There are 19 to 26 bamboo frets glued to the belly of the lute. The four strings of the pipa are tuned respectively A, D, E, A.
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